大学は有機化学系、丁度その頃にパーソナルコンピュータが初めて世の中に発売された時期だったこともあって、最初の就職はシステムエンジニアとして出発、その後コンピュータグラフィックスに興味を持ち、3DCGがまだ日本で認知されていない聡明期からこれと関わり、長く3DCG業界の歴史を見てきた者です。


現在58歳で、今は身体を悪くした影響から第一線から退いていますので、年収としては年間180万円くらいでしょうか?


【 現在CG業界が抱えている問題点 】



①最前線で使われている3DCGソフトの開発会社(Autodesk)がほぼ独占状態にあるため、ソフトの年間保守料が非常に高額であること。

②この会社の3DCGメインソフト(Mayaや3ds Max)がかなり古いソフトのため、ソフトのバグ修正が追いつかず、一部放置状態にあること。それでも業界標準のため高い保守料を払わなくてはいけない。

③このために3DCG業界では、新規のソフト開発・プラグイン開発メーカーが次のメインストリームになろうと躍起になり、全世界で乱立状態となっていて、

④しかも使える環境がそれぞれ異なるため、一つの優秀なプラグインを使うために多くの専用3DCGソフトを持たなけばならず、ソフトをまたいでの作業(ファイル変換)が全体の作業効率を落としていて、使う側としては非常に不便。

⑤プラットホームの性能が上がるたびに画質がどんどん高精細になっていくので、過去の3Dモデルが使えず、一から作り直さなくてはいけない。その3Dモデルでさえ長くは使えない未来がある。この繰り返し。



CG業界の将来はAI導入でどう変化していくのか?

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現在3DCGが受け持つ分野は多岐に渡っており、ありとあらゆる仕事があります。


昔はAdobeに代表されるような2DのCGだけだったものが、3DCGが入ってくるようになり、次にコンピュータの性能が飛躍的に上がったことで更にそれが細分化、


3DCADは機械建築製造業で必須のツールとなり、また最新の3DCGが作りだす実写と見間違うほどの精彩な映像は、今や映画業界ではなくてはならないものとなりました。

しかし昨今は、更なるコンピュータとツールの発達によって、昔であれば人でやっていた作業は、AIによって自動化されつつあります。


一番顕著なのがキャラクター人物の動きを決める作業がモーションキャプチャ技術によって簡略化されたこと。

また最近ではモデリング技術においても目の前にある物体をカメラに収めるだけで、その映像を自動で立体化(3D化)させ、その表面にあるテクスチャまでもが自動で貼り付けられて出力されるまでに来ています。

人間が行う作業がソフトやプラグインの乱立で複雑になっているにも関わらず、AIによって自動化されるところは徹底的に自動化されているという人が受け持つ作業が減っているという矛盾。


つまりこれを突き詰めて行けば、AIが出来ない作業の残りを人間が不自由なツールを使って埋めていくという状態に陥ることとなり、つまり使う者と使われる者との主従関係が逆転するという現象が起きてしまうのです。


まさにこれこそが多くのSF映画で描かれてきた人間が作り出したAIによって人間が支配されてしまうという社会でもあり、そうなれば全ての仕事がAIに置き換わる可能性さえもある訳で、現代人の美徳の中心にあった「働く」ということの概念が改めて問われることになるはずです。

現在社会問題となっているニートという現象は、おそらく未来の人間社会を予言する出来事なのではないかと考えています。

人間が苦痛であった労働に関しては、むしろ積極的にAIに置き換えることが社会のためではあるとは思いますが、果たしてこういう未来社会になった時に人間の価値観の中心をどこに置くのか、おそらくそう遠くない将来重要な問題になってくるのではないでしょうか?


まさに今の3DCG業界の現実と将来性の一端が、人間の未来社会の現実を占う道標ともなっていることに驚きを隠せません。


AI時代にCG業界で生き残るために重要なこと

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人間がAIにとって代わられるかどうかは、人間次第だと思っています。

今は人間にしか出来ないこととして一番最初に思い付くのは「創造」の分野ですが、最近ではこの創造の分野においてさえAIが入ってきており、となると残る作業はAIが創造した物を人間が最終判断としてOKを出すか否かになってきます。

もちろんここでAIが創造したものを問答無用に拒否すれば、ここで人間の尊厳は保たれるのでしょうが、


おそらくのところ、このAIの頭脳を開発した人間は人類最高レベルの英知をこのAIに覚えこませているはずであり、そうなれば一般の人間がこのAIが創造した物に対し拒否を出来るはずもなく、むしろ賞賛さえこれに与えることになるでしょう。

そうなれば、AIの創造物に異議を唱えられるのは、人類最高の英知にあるごく少数の人間でしか、それが出来ないことになり、そうなるともう個々の人間は何を誇りに生きて行けばいいのか、おそらく近い将来、人間の価値観は大きな変革を求められる時期に来ていると思います。


とは言え、この領域までAIが発達するにはそれ相応の時間と技術の発達が必要であり、またその技術は次の時代の覇権を握る重要なものであることから、これを巡っての国家間の争いも熾烈なものになると思われます。

昨今のアメリカのトランプ大統領が取った政策を見る限り、次世代を担う重要な技術(ファーウェイの5G技術に見るように)が別の国で育つのであれば、政治という権力の力で持って、


早くからその芽を潰そうと画策するのが現代文明を切り開いてきた欧米大国のやり方でもあって、


少子化が進み、ますます国力が弱体化している今の日本にあって、例えそれが日本独自の技術であっても、もはや国という価値観を持ってそれらの技術を守ることは不可能といえるでしょう。


こうなってしまうと、もはやAIの進化に個人として対抗できることは、AIが必ず吐き出すであろうエラーを人間の手で見つけてそれを修正していくこと。


もしこの仕事(AIの尻ぬぐい)をしたくないのであれば、周囲を注意深く見渡し、これをAI化(ロボット化)するのは絶対に不可能だろう、ということを見つけていくしかないのです。

ですから、AI社会を生き抜く策は二つ。AIのバグ取りか、AIが出来ない仕事。これしかありません。


将来CG業界で働きたい一人へ

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これはコンピュータ言語もそうなのですが、例え文明の最先端と言われる技術に関わっていたとしても、時間が経てばそれは必ず変化衰退するものであり、永遠では決してありません。最新技術は常に短いスパンで変化し続けているからです。

今輝いているように見える3DCG業界であっても、膨大な時間をかけて作ったものはすぐに過去のものとなり、廃棄されていくのが現状です。

ましてやAIがこの先発達すれば、作業はますます自動化され、人間がやれる作業は限られたものとなっていくでしょう。

また最後に残るはずの人間の創造力においても、それがどんなに優れたものであったとしても、時代の変化とともにそれは過去のものとなっていきます。

先が見えない時代だからこそ「今」が大事だと考える人も多くいるかもしれません。しかし最前線の「今」に関われる人は限られていて、そこには当然ですがそれそれ相応の能力が問われています。

自分が今思うのは、もしあなたが将来成功したいのであれば、「今」人が見ていない世界にその目を向けてください。自分が最初に3DCGに目を向けた頃はそんな世界でした。

誰もがまだ見ていない、人がやらない世界にいち早く注目して、その道に進んでこそ、未来は開けます。

あなたにそれなりの才能があれば、必ずあなたはその世界でのパイオニアとなり、成功出来ることでしょう。

今自分が注目してるのは、コンピュータが止まってしまった世界です。


自分は、次にあるのはその世界だと思っています。


ヒントはそこにあります。長くコンピュータの世界に生きてきたからこそ、強くそれを感じています。それこそが必ず未来社会を救う日が来るとも思っています。

電子基板上の架空の世界ではなく、「現実」や「物質」として目の前に広がっている世界。その世界を何よりも大切にしてください。答えは必ずそこに見つかることでしょう。